エニェ 公式

砂田裕智氏（スナダヒロトモ）─本場を渡り歩き磨いた確かな技

1973年、兵庫県出身。鶏肉の卸業を営む実家の手伝いで、ホテルやレストランの厨房に出入りしたことを機に料理人を志す。「ホテルオークラ神戸」のレストランでキャリアをスタート。その後、フレンチ店で同僚となった友人（スペイン出身）の母の手料理に感銘を受け、29歳で単身スペインへ渡る。7年の間、サンセバスチャン「アケラレ」など数々の名店で研鑽を積み、2009年帰国。2015年、独立とともに「エニェ」開業。

第二の故郷への敬愛と、その模倣に留まらない創造的スパニッシュ

例えば「アロス(米料理)」には、国産米の中から本場スペインの品種に限りなく近いものを求め、その再現性を追求。源流を基調としながらも、決してそこに留まらずに自由なコシーナ・ガストロノミカ(美食料理)を創造するのが砂田流だ。「Ñ（エニェ）」とは、スペイン語でのみ使用される15番目のアルファベット文字。その名に第二の郷土への敬愛を刻み、スパニッシュをベースとした無限のイマジネーションに日々花を咲かせる。

オリーブ色の壁と木のぬくもりが調和したスローで心地のよい空間

モダンジャズの流れる店内。入って左手のウェイティングスペースにはアンティーク好きの砂田氏自ら収集したソファや暖炉が並ぶ。スペインを彷彿とさせるオリーブ色の壁に、木のぬくもりが調和したスタイリッシュかつ肩肘を張らない空間にどこか安心を覚える。美食のみならず、西アフリカ産のアサメラの木を使用した6メートルもある一枚木のカウンター越しに、シェフの手仕事を眺めながら料理を待つひと時もまた贅沢な時間だ。