むら上

村上正臣・村上拓也（ムラカミマサオミ・ムラカミタクヤ）

兄・村上正臣氏と4歳離れた弟の拓也氏。天草の名店「奴寿司」に生まれ、父であり師である村上安一氏のもとで修業を積む。その後、各々で修業を重ね、2020年に兄弟で「むら上」を開店。「父の真似をするつもりはない」と言いつつも「良い調理法を閃いたと思ったら、何年も前に親父がやっていたりする」と、父の偉大さを抱きつつ、二人が思う理想の寿司を追求する。

バスに乗り最短距離でやってくる天草の鮮魚

二人の故郷は、海に囲まれた天草市。魚はその天草から、バスに乗ってやってくる。正臣氏の同級生の漁師が獲れたての魚を路線バスに積み、拓也氏が熊本市のバスターミナルでその荷を下ろす。市場を通すよりも丸一日早い到着で、文字通り朝獲れの鮮魚が夜のカウンターに並ぶのだ。地の利を最大限に活かすローカルガストロノミーの象徴のような一軒だ。

穏やかな静謐に包まれる空間

路面店のような店構えだが、実はビルの2階。やや奥まった場所にある静謐な雰囲気。照明を絞った店内も、穏やかだがどこか秘密めいた雰囲気が漂っている。特徴的なコの字型カウンターの中心には重厚な調理台が鎮座し、劇場のように視線を集める。細部まで計算されつくされた設えが、料理の美味しさに華を添える。